わたしの魔法使い
歪んだ世界に、小さな花が揺れる。

怖いのに…。

あの人に見つかったかもしれないのに…。

それなのに、目の前の小さな花から目を離すことができない。

その小さな花を持った白い手も…


怖いのに…

私を探す人は、あの人以外いないのに…。

それなのに、目を離すことができない。




「ワンッ!!」

リードを強く引かれて苦しかったのか、ゴン太が吠える。

でも、ゴン太は笑顔のまま彼を見上げている。


「お利口さんだね。お姉さんのこと、守ってるの?」


びしょ濡れの彼はゆっくりとゴン太の前に座ると、頭を撫でた。



あの人に懐かなかったゴン太。

あの人の周りの人間にも懐かなかったゴン太。

それが、びしょ濡れの彼には笑顔を見せている。


彼は違うの?

あの人の側の人間じゃないの?


「ゴン太…?」


ゴン太は私の顔を見上げる。

その顔は笑顔だった。

「大丈夫。この人は違う。あの人と違う」

ゴン太はそう言っているようだった。

ゴン太は嘘をつかない。

10年一緒にいたから、それは絶対。

嫌いな人には笑顔を見せない。信用できない人にも。

だから、ゴン太の笑顔を信じよう……

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