わたしの魔法使い
このままでいいわけないじゃん。

ちゃんと“付き合って”はないけど、一応付き合ってるんだよね?

それなのに…キスひとつない…


それはちょっと淋しいんじゃない?


…でも、言えないんだよね…

“キスしたい”なんて…


そんなことを考えながら、商店街の端っこで颯太を待っていたら、近くの惣菜屋のおばさんが出てきた。


「朱里ちゃん!颯太君は?」

「今、八百屋に行ってますよ。もうすぐ来ると思うけど。」

「そう?じゃあ、これ。颯太君と一緒に食べて」


そう言って、おばさんに袋を手渡された。

中を見ると…


「あっ!肉じゃがだ~。」

「颯太君、前においしいって言ってくれたからね」


また夕飯のおかずが1品増えた。

ホント、綺麗な顔は得だよね…



「…――朱里。肉屋以外の袋はどうしたの?」


いつの間にか帰ってきた颯太の手には、重そうな袋が一つぶら下がっている。

細い腕なのに、ギュッと力が入ると筋肉が盛り上がっていて逞しい。


って、見とれてる場合じゃない!!


「颯太!これ、もらったの。おかずにって。」

「そう。よかったね。」


颯太の顔、ちょっと嬉しそう。

そりゃあ、そうだよね。

おかず増えるんだし。

だけどね!ちょっと面白くないって思ってもいい?


< 153 / 303 >

この作品をシェア

pagetop