わたしの魔法使い
普段、“きれい”なんて言われることがないから、調子に乗っちゃいました。

さっきまでグイグイ引っ張っていた手を緩めて、少しでもきれいに見えるように意識して歩いてたら…


「うわっ!」


…はい、やっちゃったー。
意識しすぎて階段で躓いた。


このまま転んだら、あんまり高くない鼻がつぶれるなー。


何てことを思っていたら


「危ないっ!」



ギュッと腕を掴まれ、階段に鼻をぶつけることは無事回避。

もちろん腕を掴んでくれたのは颯太。


「大丈夫?怪我、しなかった?」

「あ、うん。大丈夫……」


ただでなくても人の目を集める颯太と一緒なのに、躓いたことでさらに注目を集めることになっちゃった。
恥ずかしいよー。

調子に乗ったバツだよー。

神様ごめんなさい。

もう調子に乗りません……


周りの人のクスクス笑う声が聞こえる。

あー、ほんとに恥ずかしい……

顔が赤くなっていくのが、自分でもわかる。

顔、あげられない……


「朱里はおっちょこちょいだね。」


そう言って、颯太は私の手を引いて歩き出す。


もう!ほんとに恥ずか……


「――そういうところもかわいいけど。」



……もうダメ。

絶対に今、顔をあげられない。

ゆでタコみたいになってるから……



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