わたしの魔法使い
何で奏さんがいた?

僕の居場所なんて、知らないはずなのに…

……何で?




「…――颯太。痛いよ。」


朱里の声が僕を現実に引き戻す。

振り返ると、困ったような、怒ったような朱里の目が僕を見ていた。


「あ……ごめん…」

「…あの人、誰?」

「………」

「颯太の…お母さん…とか……?」

「………」

「何か言ってよ!颯太っ!」

「…何を言えばいい?彼女が誰で、何でここにいたか。それを言えばいい?……知りたい?彼女のこと。僕を自分のものだって言った彼女のこと。」


自分でも驚くほど冷たい声だった。

朱里を傷つけている。

それがわかっていても、止められなかった。

「颯太……」

「朱里には関係ないだろう!」

「――!」




大きな瞳から溢れる涙が、朱里の頬を伝い落ちる。

その涙で、僕がしたことを思い出す。


突然現れた僕を受け入れてくれた。

なにも話さない僕を好きになってくれた。

僕の作った料理をおいしそうに食べてくれた。


それなのに……

僕は朱里を傷つけた。

取り返しのつかないほど、深く傷つけた。


「あ……朱里…………」


走り去る後ろ姿を、僕は見ているしかなかった。



< 191 / 303 >

この作品をシェア

pagetop