わたしの魔法使い
エントランスを出たところに止まっていた黒塗りの車。

その中から顔を出した、綺麗な女の人。

ショートにした髪を茶色く染めたその人は、30代にも、50代にも見えた。


すごく綺麗で、大人な雰囲気で……


わかってる……私なんて敵わないって……

わかってる……

それなのに……


“朱里に関係ない!”


そう言われた。


関係ない……か……


そうだよね。

颯太は魔法使い。

それ以上は教えてくれなかった。

何一つ、教えてくれなかった。

“過去なんてどうでもいい”って思ってたのに……

今の颯太を知ってればいいって思ってたのに……


それなのに……


「関係ないって……」



私はそれだけの存在なんだ……

好きだって言ってくれたのに……

それなのに……





どこをどう歩いたのか、いつの間にかマンションまで帰ってきていた。


マンションの前には


まだあの黒塗りの車が止まっていた。



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