わたしの魔法使い
会長は僕を笑顔で迎え入れてくれた。


「会長。急に押し掛けて申し訳ありません。」

「いや。それよりどうしたね?」

「実は……」




会長にすべてを話した。

過去の事、朱里を好きになったこと、朱里を傷つけたこと。

この数ヵ月に起きた、様々なことすべてを。

会長は驚きながらも、黙って聞いていてくれた。

責めることもなく、ただ黙って。


「……会長、申し訳ありません。僕はもう……」

「話はわかった。でも、会社を辞めることはなかろう?」

「いえ。ケジメですから。……それと、この事を会長からお話ししていただけますか?僕はもう、朱里さんに会うこともないと思うので……」



会長は何度も“辞めることはない”と引き留めてくれた。

でも、決めたことだから。

朱里に繋がるすべてを、断ち切るって。



「…――中埜君の決意は固そうだね。…では、こうしよう。君の気持ちを手紙に書いてくれないか?それを私は渡してくるから。」


会長はそう言ってデスクから便箋を取り出して、僕の前においた。


「もう誰も残っていないから、ゆっくり書くといい。私もまだ仕事が残っているから」

「…わかりました……」


僕は深呼吸をすると、ペンを取った。




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