わたしの魔法使い
再会からしばらく経った晴れた日曜、僕は数少ない荷物をもって朱里の部屋へ引っ越しをした。

店へは通えない距離ではないし、とにかく朱里と一緒にいたかった。




ただ、現実は思った以上に難しく……



「…――何よ!颯太のバカ!」

「バカとはなんだ!朱里の頑固者!」



何度も衝突を繰り返した。

別れ話になることもしばしばだった。



……何でこんなにケンカしちゃうんだろう?




お互いに大切に思っているのに、どうしても伝えきれないときがある。

些細なすれ違いや、嫉妬、仕事……

一緒にいる時間が長いほど、衝突を繰り返す。

その度に絆は深まっていくけど、衝突の回数は減ることがなく、反対に増えていった。





朱里の誕生日を翌日に控えたこの日も、些細なことでケンカになった。

原因は些細な嫉妬からだった。

いつものように朝御飯を食べていたとき、軽く言った朱里の言葉に僕が怒ったのだ。


「…――昨日ね、田中さんとランチしたの」

「……え?」

「打ち合わせも兼ねてだけど、誕生日の前祝いだって。」


いつもなら聞き流せるようなことだった。

“よかったね”

そう言って終わるはずだった。

だけど、今回に限っては、どうしても聞き流せなかった。


「何で昨日の内に話さなかったんだよ……」

「何でって……昨日話そうと思ったら、颯太が聞いてくれなかったんじゃない」

「別の話はよくしたのに、何で田中さんとのランチは言わなかったんだよ!」

「それは……」

「やましいからだろ!」



そこからは泥仕合のようだった。


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