マスカケ線に願いを

「じゃ、帰るか」

 連れ立って一階に降りた私達。話によると、久島弁護士はバイクで通勤しているとのことだった。
 駐車場まで行って、バイクにまたがった久島弁護士を見て内心感心する。ライオンのような姿がバイクに凄く似合っていた。
 そしてこの様子だと、蓬弁護士が私を送ってくれるらしい。

「それじゃあ、ユズ、大河原さんを捕って食うんじゃないぞ」
「お前じゃないから大丈夫だ」
「大河原さん、気をつけてな。付き合ってくれてありがとうな」

 そのまま久島弁護士は豪快に去っていった。

「ライオンみたいな人ですね、久島弁護士」

 私の言葉に、蓬弁護士が吹き出した。

「ライオンか」

 どうやらつぼにはまったらしい。

「さ、俺達も帰ろうか。家はどの辺?」
「あ、いや。駅まででいいですよ」

 このままだと家まで送ってくれることになってしまう。

「遠慮しない。俺は車なんだから」
「でも……」

 本当に悪い。
 遠回りとかだったら、凄く悪い。

「あの、三代にあるマンションです」
「三代? なんだ俺のとこの近くじゃないか」

 あ、近いのか……。

「だから遠慮しないで。さ、乗った乗った」
「こ、これ、蓬弁護士の車ですか?」

 私はその車を見て、思い切り腰が引ける。
 誰だって、有名な高級スポーツカーなんかに乗れって言われたら、しり込みしてしまうと思う。
 蓬弁護士はそんな私を見て、苦笑した。
< 12 / 261 >

この作品をシェア

pagetop