マスカケ線に願いを

「だけど、今日杏奈に会って、元気出してくれたと思う。楽しみが増えれば、元気にもなってくれるだろう」
「そうだと良いな」

 私は笑って続ける。

「それじゃあ、子作り頑張らなきゃね」

 私の言葉にユズが盛大に咳き込んだ。運転を誤らなかったのは、奇跡だったと思う。

「おま、お前な! 運転中にそんなことを言うな! 危ないだろ」

 むせながら文句を言うユズの顔が真っ赤になっていて、本当に可愛い。

「ごめんなさい」
「全くだ」

 むっと口を尖らせるユズはやっぱり子供っぽい。それなのに私を包み込んでくれるような包容力がある。

 この人を、一生放したくない。





< 260 / 261 >

この作品をシェア

pagetop