マスカケ線に願いを

「杏奈があんまり可愛いから」
「だからって……っ」

 心臓が鳴り止まない。
 真っ赤に染まった顔も、しばらくは元に戻りそうにない。

 一気に高揚した心は、落ち着いてくれそうにない。

 ソファに座ったままのユズがじっと私を見上げる。

「杏奈」

 そっと私を呼んで、右手を伸ばした。

「っ……」

 そっと、ユズが私の頬に触れる。

「顔、真っ赤」
「だっ、誰のせいで……」
「俺?」

 ユズはふっと笑って、

「なあ、髪下ろすの、俺の前だけにしてくれよ」
「え?」

 そう言ったユズが私の生乾きの髪に触れた。

「杏奈、髪下ろしてると、本当に可愛いからさ。他の男に見せたくない」
「約束はできないよ」

 仕事場ではいつも髪をまとめているけど、普通の日はおろしていたい。

「そろそろ、寝るか」

 あくび交じりの声で、ユズが言った。
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