トーカタウンの子供たち
第2章

決戦前夜

「ご協力感謝します!」
自分よりも若く見える兵士が敬礼をして立ち去って行った。弾倉をばらまいてしまったのをニコが拾ってあげたのだ。

赤き黎明の野外訓練所に夕日が差している。ニコは父との会話を思い出していた。
「恭介、お前ならわかってくれると信じている」
「俺は親父とは違う。武力に訴えるなんてらしくない。それにこれだけの物資は一体どこから」
「東花にも支援をしてくれる人々がいてな」

(東花に支援者…勝算はあるということか)

夕日に照らされながら刀を振るアカツキを眺めていた。
隣にアーサーが腰掛ける。

「俺はクーデターに参加しようと思う。随分と大それた話になってしまったが、俺はもともとこの国の人間だからな。この国の苦しい現状も知っていたし、少しでも良くなればと思っていた。お前はどうするつもりだ」

「親父のしようとしていることでたくさんの人間が傷つくかもしれない」

「だが、黙っていても変わらない。違うか?」

自分の言ったことは詭弁に過ぎないとわかっていた。

(俺にはまだどうしていいのかわからない。こんな土壇場になっても。俺はこんな奴だったのか?優秀だと持て囃されその気になっていた。不自由なく暮らしてきて甘やかされ結局はただの坊やだったってことか。なんて不甲斐ない)

「これは北の問題だ。今はな。お前の親父さんが関わっていたとしてもだ。ここでお前が闘う理由なんてない。東花に戻れよ」
アーサーは優しく笑っていた。
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