下剋上はサブリミナルに【BL】
具体的には食事の支度や家の中の掃除や買い物や、そしてオレ達子どもの世話。

元々専業主婦で家事慣れしていた母ちゃんにとっては全然苦ではなかったらしい。

母ちゃんは事あるごとに「自分は恵まれている。幸せだ」と感謝の言葉を口にしていた。
「亡くなったあの人が、天国から手助けしてくれているんだろうね」と。

オレも感謝している。

父親が亡くなったというのはかなりヘビーな境遇に入るらしいけど、その事にこだわる事なく、変な劣等感を感じる暇もなく、ここまで大きくなることができたから。

だけど……。


その勤務先が、別の家だったら最高だったのに、としみじみ思ってしまう。

もしくは社長の息子がアイツじゃなかったらオレの人生はもっと穏やかであっただろうにと。


なんて、そんな事を考えてしまうオレはかなりバチ当たりなんだろうか?

だけどやっぱりついつい無いものねだりをしてしまう。

オレの人生は幸せでもあり不幸でもあった。

色で表現するのなら、薔薇色とダークブルーが渦をまくマーブル模様。

何故ならアイツと出会ってしまったから。


社長の一人息子である東条洸と、否応なしに、密接に、関わる羽目になってしまったから。
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