アンダーサイカ


「そういうわけで、アンダーサイカ中の商売人が、清めの塩を欲しがっているんです。こわーい鬼から身を守るために。

だから助けてあげないと。
手伝ってくれますね?豊花ちゃん。」


配達員さんから顔を逸らし、ヨシヤの顔が私だけに向く…。


「…………っ!」


彼はいつもみたいに笑ってた。

…いや、確かに笑ってるんだけど、…何かが“変”だ。



―――…そうか、冷たいんだ。とっても…。



ヨシヤの目には“商売人たちを助けたい”という気持ちがまるで無かった。

もっと言えば、

“人鬼に食い殺されようが知ったことか”と、突き放すような…。



ぞくり。
背筋に悪寒を感じる。

あんな話聞かなければ良かった。
だって今の私は、商売人たちを食い殺す人鬼よりも、


…ヨシヤのほうが恐いと感じているんだから。



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