アンダーサイカ



「豊花、こっちこっち。
転ばないようにね。」


稔兄ちゃんが私の手を引いてくれる。

暗くて不気味な通路も、稔兄ちゃんと一緒なら平気だった。


「稔兄ちゃん、どこまで行くの?」


「もっともっと奥だよ。
ボクの店を豊花に見せたくて。」


商売人の稔兄ちゃん。
一体何のお店だろう。


―――稔兄ちゃんは頭が良いから、きっとどんなお店でも大丈夫ね。



繋がれた手をうっとりと見つめてから、通路を堂々と突き進む稔兄ちゃんの背中を見る。


「…ん?」


―――堂々と…?



「稔兄ちゃんは、罰金取られないんだね?」



ヨシヤは一歩出ただけでいっぱい石のお金を取られたのに。
稔兄ちゃんは大丈夫なんだ…。


「うん、ボクは特別なの。」


「ふぅん…。」



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