アンダーサイカ



「…やめて、やめてッ!!
稔兄ちゃんひどいよ…!!
お願いだからもうやめて!!」



弾かれたように私はステージに上がった。

またお客様を口に運ぼうとするのをなんとか止めたくて、思いっきり手を伸ばす。


その手首を、


「…あっ!」


稔兄ちゃんの空いてるほうの手で難無く掴まれた。



半分になったお客様を床に落とし、ホルマリンと黒い血でベタベタになった手で、私の頬に触れる。


「ひっ…!!」


冷たくてぬるぬるしてる。
すごく気持ち悪かった。



「………豊花、ひどいのはお前だろ?

ボクはずっと“お前の傍にいた”のにちっとも気づかないで。」



「…え………。
傍に、いた…って…?」



―――そんなわけ…。だって私、さっき初めて稔兄ちゃんを見たのに…。



< 368 / 506 >

この作品をシェア

pagetop