アンダーサイカ
「…なあ、本当に願いを叶えてくれんのかな…?」
今回の冒険の言い出しっぺである拓哉(たくや)くんが震える声でそう訊ねてきた。
男のくせに臆病だ。
「れ、冷静に考えて、こんな所で人が商売してるわけないでしょ…!?
この駅は5年も前に封鎖されたんだから…!」
拓くんの問いにピシャリと答えたのは、私とは別のもう一人の女の子、潤子(じゅんこ)ちゃん。
いつもは気が強いのに、この時ばかりは若干腰が引けて見える。
拓(たく)くんと潤(じゅん)ちゃんのやり取りを眺めてから、一番後ろを歩く私はキョロキョロと辺りに視線を向けた。
狭い通路に人の気配はなく、シャッターはすべて閉め切られている。
商売をしたところで客なんか入らないだろう。