アンダーサイカ


「やだっ…、いやだ、

いやだ!!…うわああぁ!!」


稔兄ちゃんの叫び声が聴こえる。


「稔兄ちゃん……!!」


悲惨な光景だった。

黒い泥水が命を持ったように、沼に浸かった脚から上へ上へと、稔兄ちゃんの体を這っていた。

じゅるじゅるじゅる…。嫌な音を響かせて。



「やだッ…たすけ…豊花ァ……!!」



稔兄ちゃんは私に向かって手を伸ばしたけれど…、それより早く、黒い泥に体を覆い隠されてしまった。



「…あっ、ああぁ…ッ!」



私は助け出すことも叶わなくて、稔兄ちゃんが黒に飲まれる一部始終を、ただ見ていることしかできなかった…。



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