アンダーサイカ
稔兄ちゃんが死んだのは12歳の時だ。今の私と同じ。
2歳の私も生きていたわけだけど、赤ん坊の私に稔兄ちゃんの記憶はない。
家族4人で写ってる写真もなくて、一度だけ疑ってしまったことがある。
“稔兄ちゃんという人物は本当いたのか?”
『稔は確かにいるわよ。とっても良い子だったんだから。』
お母さんは笑って、稔兄ちゃんのテストの答案を見せてくれた。100点満点の、見本のような解答用紙。
名前の欄にも子供の字で「西城 稔」と書いてある。
そっか、私の勘違いか。稔兄ちゃんは確かにいるんだ…。
そうホッとしたけど、稔兄ちゃんについてのことはやっぱり教えてもらえない。