あの頃、テレフォンボックスで
「トーコさんっ」


呼ばれて、慌ててふりむくと
そこには制服を着た
ケイタくんの姿が・・・・・


「あら?どうして?学校は?」


いきなりの質問攻め。


「オープンキャンパスに行ってきたから。」


ケイタくんはエスカレーター式に
系列大学へは進学せず、
外部受験をするという。


それも
医学部。


「母親が・・・・あ、・・・
母が医者だしなぁ。
じいちゃん、小さな診療所をやってるから」

「お父さまは?」


「研究者。つまんない家族・・・・・」


なんのぎこちなさもなく、
カウンターの
私の隣の席に、
彼はすべるようにして
座りこんだ。


「ふ~ん。」


ふいに、足元を見つめる。

大丈夫、なんだか今日は・・・・

自然に笑えてるもの。



高鳴る胸をしずめるように
瞳子は
心の中でつぶやいた。
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