あの頃、テレフォンボックスで
かくしごと
ちょうど土曜日の晩に
夫から帰ってくると連絡があったので、
亜紀ちゃんにそう伝えると、
迎えに来た中村さんの車に
おとなしく乗りこんで帰って行った。


亜紀ちゃんにわかる日はいつだろう。

母だって、女なんだということが。
誰だって一人では生きられない。
母親だからって
強いわけじゃない。




中村さんのことを夫に話したら、


「離婚もたいへんそうだけど、
再婚もたいへんだろうな。」


と、

全く無関心な様子で
そう答えた。



夫の人生に
「離婚」という文字はないのだろう。


たとえ、今、志穂がいうように
浮気をしているとしても、
彼の頭には
「離婚」の文字はないはずだ。



それと同じく
「妻を愛する」という文字も。




私は家族であって、それ以上でも
それ以下でも・・・・



それ以外のなにものでも、
ない。
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