雪が降る町~追憶のletter~
ひとしきり晶が騒ぎ終わった後も、箱の中にしまうことはせずにそのまま手に乗せ眺めるようにしながら快斗に話しかける。


「運命ってホントにあると思う?」


そんな突拍子もない晶の質問に快斗は黙って聞き、少し間を置いて空を見上げて答えた。


「さぁな」


晶も快斗に背を向けるようにバルコニーの柵に寄りかかって黒い空を見て小さな声で言った。
それは、この冬の空に消えてしまって、快斗に届かないならそれはそれでいい。そう思って、小さな声で。


「佐野さんて、快斗のこと好きなのかなぁ」


その独り言のような言葉は、快斗の耳にはしっかりと届いていて。
それは果たして良かったのか、良くなかったのか晶自身もわからない。




「さぁ····俺は別にいるから」



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