雪が降る町~追憶のletter~


「結城さん」


終業時間まで残り10分足らずという時に背後から声が掛かった。


「真田さん!」
「お疲れ様、ちょっと悪いんだけど・・・」


真田は周りに気付かれないよう気遣って移動を促して2人は少し離れた資料棚へと向かった。
そこは同じ空間の一室だが、今は2人しかその棚付近にいない為に会話を聞かれることはない。


「今日、少しだけ遅くなりそうなんだけど」
「あ、多少大丈夫です。待ってますから」
「そう?ごめんね?」


手短に話を終えると、平静を装って2人はそれぞれのデスクに戻る。

残業の真田を待っても大地との約束には十分間に合う。
それに、晶の中で、今日の話をひっぱりたくはなかった。

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