雪が降る町~追憶のletter~
その俺の声にハッとした晶は勢いよく振り返った。
「お前、何してんの」
「か、快斗っ!」
数時間振りに間近で見る晶の顔は、頬も鼻も真っ赤。
髪からは、積もった雪が凍ってる。
「…こんな時間になるまで…アブねぇだろ」
「…でも…」
「帰るぞ」
俺は強引にそういって晶に背を向けてバス停の方へと一歩踏み出した。
「……」
無言でその一歩についてくる晶の足音を確認してから、俺は振り向いて黙って片手を差し出した。
「え…?これ」
「持てねぇくらい、手、かじかんでるのか?」
「だ、いじょうぶ…」
晶は小さく答えて、本当は冷え切って感覚もなくなりかけているだろう手を懸命にポケットから出して、俺の差し出したココアを受け取った。
俺の手からココアが離れ、残った少しの温もりをも晶にあげたくて手を取ろうか考えた。
けど、臆病な俺はどこまでも臆病で―――…。
「…ありがと」
背中から聞こえた晶の言葉を聞きながら、その自分の手はポケットにしまってしまった。