雪が降る町~追憶のletter~

しんしんと、止まない雪の中を二人で並んで歩く。

いつもは明るい空の下だが、今は違う。

暗い空に映える白い雪。
オレンジ色に淡く灯る街灯。

蒼白くも見える足元の雪を、いつもと同じ音を立てながら歩く。


家に着く手前で、不意に俺の口からついて出た質問。


「なんで、名前もないやつのこと、こんなに待ってたんだよ」


バカ素直なのにも程がある。
俺はキュッと立ち止って晶をまっすぐに見た。

すると、晶もギュッと足を止めて俺を振り向くようにして見て言った。


「だって、とても嘘だと思えないような、真っ直ぐな字で書かれた手紙だったから」


その一言に、見透かされた、と思ってしまった。

だって、嘘じゃない。
俺の、本当の、気持ちだったから。
それが晶に伝わって、本当なら喜ぶところなのに。

どうして俺は名乗らなかったんだろう。

今更後悔してももう遅い。


「今でも―――そう思う、か?」


結局は現れなかった、現時点でも、そうやって言える…?


「……私はそう、思いたいから」




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