雪が降る町~追憶のletter~
“隣”っていうのは隣の部屋のバルコニー。

昔からここで話をしていた。
自分の部屋の窓からよりも、出っ張ってるから話がしやすい。

何をあんなに話すことがあったのか。

遠い昔にした話題など、もう忘れてしまった。
だけど、やっぱりあの手紙とあの日のことは今でも鮮明に覚えている。


隣の部屋は空き部屋で、洗濯物を干したり、来客があったときに使ったりする部屋。
こんな時間に誰もこの部屋に来たりはしない。


晶は電気もつけないまま、そっとバルコニーに足を踏み出した。


「寒っ!!」
「そりゃお前、んな格好···」


晶の第一声に、快斗は呆れて返事をする。

そう。スウェットと薄手のロンT1枚。極めつけは裸足…という、うっかり薄着のまま来てしまった。
北国ではストーブや暖房をガンガンつける為、家ではわりと薄着。

その点この町をしばらく離れていた快斗はちゃんとパーカーを羽織ってそれなりの服装をしていた。
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