雪が降る町~追憶のletter~


「じゃあ···」
「おう」


家の前でようやく重なっていた手が離れると、ひやりとした風が手を撫でて行き、晶は改めて快斗の手の温もりが大きかった帰り道だったと気付かされた。

二人はほぼ同時に門を通過し、玄関の前に立つ。


「···風邪ひくなよ」
「…快斗もねっ」


そうしてお互いに家へと入って行った。

玄関の中に入った晶は靴もコートも脱がずに、自分の左手を右手で包み込むようにして暫く快斗の余韻に浸っていた。


なぜ、手をとってくれたのだろう。

きっと特別な思いな訳じゃない。
もしかしたら、佐野さんにも同じようにしてるのかも知れない――。


こんなことを考えてる自分は、佐野さんに明らかに“嫉妬”している。
けど、“幼馴染み”としての嫉妬心だとこの時な晶はそう信じてやまなかった。


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