雪が降る町~追憶のletter~
「手」
快斗の言葉は肝心な時に一言足りない。
だけど晶にはすぐに理解できる。
『手』と言われた――それは先程の真田との手を重ねているところを見たということだ。
(見られてた―――!)
「気がないなら、変に期待させるな――··」
「――っ―快斗に言われたくないッ!!!」
快斗の語尾にかぶせるように晶が言葉を投げつけた。
それも、いつもにはない、感情的な―――。
そして感情的なのは声だけでなく、快斗が向けられた晶の目からも感じられた。
快斗の手を振りほどいて目の前の自宅まで一気に駆ける。
快斗は追い掛けることをせずその後ろ姿をただ見ていた。