急性大好き症候群
「送ってってやる。近いんだろ?」

「え。あ、いや、いいよ。太一くんこそ早く帰んなきゃ」

「俺の家もここから近いから。早く教えろよ」


有無を言わせぬ言い方。


あたしは何も言い返せずに、渋々家まで送って貰うことになった。


「……ありがと」


家の前にはすぐに着いて、腕から手を離された。


「これからは気をつけろよ」

「わかった」

「あ、忘れてた」


あたしに背を向けて歩こうとした太一くんがこちらを振り向いた。


「あんた、名前は?」

「え? 前野……唯織……」

「唯織か。じゃあな、唯織」


呼び捨てって……。


あたしに背を向けて歩きながら、太一くんはあたしにひらりと手を振って、去って行った。




これがあたしと太一の出会いだった。


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