純悪女!?~ドSなアイツの結婚計画~

結局、披露宴はせず、ごく親しい友人のみを招待した小さな式を挙げたんだ。



「彼、あの後何度も両親に話をしてくれて……時間はかかりましたけど、やっと嫁として認めてもらうことができました。そして、その後この子を」

「本当に、よかった……」

「おめでとうございます」


ポロッと涙をこぼした私に、ハンカチを差し出しながらそう言ったのは桐生さんだった。


桐生さんはあの時……披露宴の中止で、様々なものをキャンセルされたお客様のために走り回った。
いつもは予算にシビアな彼が、なに一つ文句を言うことなく。


急遽キャンセルした花代や、料理の材料費も、本来ならキャンセル料を頂く時期だったのに、なんとかすると言って、本当になんとかしてくれた。


あの時の桐生さんは、普段の性悪男の顔がどこにも見られなかった。
お客様のために奔走する彼は、まさにウェディングプランナーの鏡だった。

< 35 / 311 >

この作品をシェア

pagetop