×戦国ギャグ物語×
第9幕×家出編

×乱れる

「霧助!!霧助はおるか!!」
「はっ、ここに」


屋敷を揺らさんばかりの大声で、拙者の名を叫ぶ政幸殿。

珍しい事もあるものだ、あの冷静沈着な政幸殿が大声を張り上げるとは。


「霧助、幸が…幸が…!!」
「なっ、ちょっ…落ち着いて下され政幸殿!」
「これが落ち着いてなどいられるか!!」


拙者に抱き着き涙を流す政幸殿。
せっかくの美男が台無しでござるよ。


「政幸殿、まずは深呼吸を」
「ひっ、うっ…く、うぅ…」
「…一体幸姫がどうなされた?」

「うっ…うぅ…幸が…幸がいなくなった!」
「幸姫がいなくなった!?」

「えぅっ…幸の部屋に、うっ…置き文、が…お、置いて…っ」
「とにもかくにも、まずは落ち着いて下され。話はそれからでござりまする」


メソメソと女々しく嗚咽をあげる政幸殿は、涙でグシャグシャにされた文を拙者に渡した。

しがみつく政幸殿の頭を撫でながら読むと、なるほど家出でござるか。
あのお転婆姫、ついにやりおったな。


「幸、にっ…も、もしもの、事が…うっ、事が、あったら…おっ、俺は…俺は…!!」

「ご心配召されるな、政幸殿。拙者が必ずや幸姫を連れて帰りまする」
「そ、それはっ、真か…霧助」

「お約束致そう」


泣きはらした顔を拙者に向け、政幸殿は大きく頷いた。


「さぁ、涙をお拭き下され」
「わ、わかっ、わかった…」

「よしよしでござる…って、拙者の忍装束で鼻水を拭かないで下され!!」


油断も隙もござらぬな、やはり幸姫と血をわけた兄君でござる!


「うっ…く、た、頼んだぞ…すん…霧助」
「あーあー…拙者の忍装束が…洗ったばかりと申すのに……。わかり申した、それでは行って参りまする」


さて、迎えに参るか、あのお転婆姫を…。

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