×戦国ギャグ物語×

×川の字

屋敷の廊下を見回り、問題がなければ拙者は寝る。

ちゃんとあの姫は寝ておるのだろうな…。

もしやまた夜更かしして忍者ごっこをしてるのでは…?


少し気になった拙者は、幸姫の眠る部屋へ向かった。
障子を開き、そっと中の様子を伺う。


「なっ…いない!?」


どこに行ったでござるか、あの姫は!!
せっかく敷いてやった布団に入った痕跡もないとは!

だったら敷かせるな…と拙者は溜め息を吐いて、幸姫を探した。



「……ね、……が………のよ…!」
「…か………よか………い…」

「………?」


途切れ途切れ聞こえる声…この距離からだと、政幸殿の部屋か。

拙者は自然と小走りで政幸殿の部屋へ参った。


「失礼致しまする!」

「キャーッ!! お化けーッ!!」
「幸、よく見ろ…鬼のような形相をした、ただの霧助だ」

「…幸姫も政幸殿も、拙者を怒らせたいのでござるか?」


驚いて政幸殿に抱き着く幸姫と、その頭を撫でる政幸殿。

…二人して何をやっておりまするか。


「幸が怖くて一人じゃ眠れないと言ってな…一緒に寝る所だったんだ」

「…幸姫、よもやあの御嵬寺での肝試しが原因等申されぬでござろうな…」
「うぅ…だって、怖いんだもん…」


拙者は腰に手を当て、呆れた顔で幸姫を見下ろした。

そんな事になるから、拙者は反対したのだ…。
自業自得でござろう、幸姫…。


「霧助も一緒に寝よう!!」
「はっ!? ば、なん、なっ、何を申されまする!?」
「ほら、こっち!兄上が右、霧助が左で私が真ん中!」
「なるほど、川の字か…。よし、霧助…こい!」
「ま、政幸殿!?」

「捕まえろーッ!!」
「霧助、観念しろ!!」

「ギャアーッ!!」
< 66 / 84 >

この作品をシェア

pagetop