×戦国ギャグ物語×
第2幕×戦編

×挑戦状

戦国乱戦…やはり、神代家のところにも戦の報せがきたか…。

政幸殿は険しい表情で文を読まれておられる。
送り主は、敵軍の武家、芳垣家当主。

抜群の体力と馬鹿力が有名な厄介者だ。


「兄上は何を読んでるの?…恋文?」
「恋文であのような険しい顔をするわけないでござろう。挑戦状でござるよ」
「ふーん…」


影から見守る拙者の背後から覗き込む幸姫。
妹君なりに、兄君が心配なのであろう。


「戦は嫌い、みんなボロボロの布切れみたいになって帰ってくるもん」
「酷い言い様でござるな」
「だって本当のことだもん!兄上も霧助も、屋敷のみんなも怪我して帰ってくるもん!!」
「幸姫…」


今にも零れ落ちそうな大きな涙をこらえ、幸姫は涙声でそう怒鳴った。

確かに、屋敷の当主である政幸殿はともかく、忍である拙者もまた戦に出なければならぬ。
一人皆の帰りを待つ幸姫には、辛い一時であろう。


「幸姫、拙者達は必ずや生きて帰りまする」
「…本当に?」
「うぬ、約束致そう」


拙者は幸姫の肩を抱き、慰めるように頭を撫でた。


「幸姫の申す、ボロボロの布切れになろうとも、必ずや生き延び、この屋敷に戻って参りまする」
「クスッ…約束だよ!」
「うぬ」


ようやく、いつもの幸姫の笑顔が見れた。

やはり、悔しいが幸姫には泣き顔より笑顔が似合う。
これ程までに、無邪気な笑顔が似合う姫君は他にいようものか。


………って、拙者は何を血迷っておるか!
このお転婆姫にはいつも振り回されてばかりいると申すのに!


「どうしたの、霧助」
「な、何でもござらぬ!!」


このお転婆姫を、可愛い等…きっと拙者は疲れておるのだ。

今日は早く休むようにしよう。
先の戦も、決戦が近い…気を引き締めなければ…。
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