絡む指 強引な誘い 背には壁 Ⅲ
「……そうだな……香月」
「私、ずっとずっと成長できたと思います」
「ああ……。俺も、子供だった……」
「いろいろなことがありました」
「うん……そう……」
「宮下店長、私、夢を持つことにします」
 スカイラインは静かにエントランスで停車する。
「夢?」
「はい、仕事の中で、夢を持とうと思います。今はそれが、目標が全然定まってないから分かりませんけど、明日でも香西副店長と話しをして、なんか目標を考えたいと思います」
「うん、香西店長な」
「あ(笑)、そうでした。滅多に間違えないんですけどね(笑)」
「本社からも応援してる。また、本社に来た時は顔を出してくれ」
「はい。じゃぁ……送ってくれてありがとうごさました。失礼します」
 自分だけがすっきりしている?
 そんなつもりはない。
 宮下が結婚前提でと、真剣にこの付き合いを実らせようとしてきたことは分かるが、自分にはそれが向いていなかった。
 そういうことだ。つまりは多分、まだ宮下一人の者にはなれない、自分の幼さからきた、別れだったのだ。
 そういうことなのだ……。
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