*桜色の想い出*
彼は次の日もその次の日も
あたしの病室に来ていた。

見張り・・・?

ちょっとそんな事とか思ったけど
軽く流した。


「俺は元橋 怜桜!お前は?」

勝手に一人で自己紹介を始めた彼・・・。

しょうがなくあたしも名前を名乗る。


「あたしは・・・日吉 咲綺」

「あ、今思えば病室の札に書いてあるわ・・・」

「・・・・・」


こんな適当野朗とあたしは話しているのか・・・。

あたしは心の底から呆れた。

・・・でも、彼が居たからあたしはほんの少し
笑顔で居られるのかもしれない・・・。


でもお礼なんて言わない。

何か恥ずかしいから・・・。
我ながら無い・・・。


すると急に彼があたしのipodを触りだした。

「ちょ、何すんの・・・!?勝手に触んないでよっ」

「ちょっとだけっ」


するとipodをイジりだす。

「あ、この曲知ってる・・・」


ぼそっと呟くように彼は言った。

「知ってるの!?」

でもあたしはそんな声を聞き逃さなかった。
このバンド名を知ってる人は周りにほぼ居ないから。


「あたしこの人のファンなんだー」

「俺も!いいよなー」
「奇麗事ばっか並べてなくて、歌詞がちょっと捻くれてて」

奇麗事・・・捻くれてる・・・確かに。
だから好きになれてんだ・・・。


話題はそのアーティストで大盛り上がり。


ちょっと・・・
うぅん、すごく楽しかった。
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