あの夏の君へ
「何?」
ねえ、荻。
どうして?
どうしてなん?
何で電話なんか掛けて来るん?
離れるって決めたんなら、とことん突き放してぇや。
寂しいし、恋しくなるねん。
夢のために私やて我慢してたんやで?
「何?」
『いや。元気かなって思って…』
夜、十一時半を回っていた。
なぁ、荻…。
今、どこにいるん?
「車の音聞こえる…」
『あ…。今、ケンの散歩中』
「そっか…」
私も部屋のベランダから夜の冷たい空を眺めてたんやで。
私たちは同じように、同じ空を見ていたんやろうか。