あの夏の君へ





暑い夕暮れの日差し。

いても立ってもいられなくて、まだ五時やのに家の前に突っ立っていた。

ただひたすらドキドキする鼓動を抑えるように忙しなく、歩き続けた。




早く、時計の針よ、早く…。


時間よ、早く。


一時間後の私と荻に会わせて下さい。


なんて言ってあげようか…。


“おかえり”って笑って迎えてあげるべきなんか。

“おっそいねん”って言ってパンチするべきなんか。

“会いたかってん”って素直に言うべきなんか。




「会いたいは…ちょっと恥ずかしいしやめよかな…」


荻は笑う??

照れる??

バカにする??




< 217 / 278 >

この作品をシェア

pagetop