紅梅サドン
心臓が鳴り響く。

威勢の良い縁日の太鼓を胸に抱えている様だ。

体中に僕の心臓が肥大化し、破裂して散り散りになって、そのままこの世から消えてしまいそうだ。

ーーしかし敢えて言おう。

人間は容姿じゃない。

ーー心。

心が一番大切だ。



ごめん嘘だ。



『美人よ来い!!』


怠惰な速度で春風がゆるりと頬をなでた。

五月の空気は緊張する僕の体温を上げも下げもせず、ただ生温い温度を保っている。



銀座は何故か、昔からどこか懐かしく甘い香りが漂う街だ。



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