紅梅サドン
泣き疲れてふと横を見ると、雪子がいつも使っている小さな鏡が置いてあった。

僕の泣きはらしたその顔が、鏡一杯に映り込んでいる。


事情は違っていたとしても、ラガーマンと僕はきっと一緒なんだ。

自分の一番大切な人間を、自分自身のせいで失った。


僕はこの住み慣れた六畳間に、ただ一人残された子供の様に膝を抱えた。


こんなに情けない僕を残したまま、雪子やルノーや次郎の姿が、何だかこのまま何も無かった様に消えて行ってしまいそうでーー。


雪子達が住み始めてからの日々の中で、その時、初めて僕はーー『寂しい』と感じていた。



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