紅梅サドン
ルノーは相変わらず僕のお気に入りシャツを着たまま、加えて当たり前の様に靴を脱いだ。




「秋ジイ、今日泊めて。もう他人じゃないよ、シャツも共有したしさ。」

ルノーのキラキラした少年笑顔が僕に真っ向から突き刺してくる。

俺は残念ながら女じゃあない。

その笑顔で様々な女をコロリと騙して来たんだろうが、そうは問屋が卸さないというやつだ。

危ない。俺が女だったら、危なかったな。

しかし僕は男だ。

貴様がどんなに綺麗な顔をしてても、お前に『抱かれたい』などとは間違っても思わない生物だ。

そして31歳だ。

僕は大きく息を吸って、大人の持つ決して隙を見せない穏やかさと、年輪を重ねた強さを秘めている低い声で答えた。






「ーー断る。」






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