紅梅サドン
「じゃあよろしくねえ、秋ジイ、雪子!

次郎は帰りな。もう遅いから、里親さん心配するぞ。」

次郎はルノーの顔を見るとニコリと笑い、僕に一礼をしてスタスタと玄関へ向かう。

「次郎君さ、何でおとといの晩ルノーがここに来た事知ってたの?。」

次郎は僕の問いかけに、急に事務的な口調で答えた。

「話すと長くなりますので、また今度ーー。」

そう答えて帰ろうとする次郎のカバンの中に、薄いノートパソコンがチラリと見える。

昼間も太陽の当たらない薄暗い玄関は、部屋の蒸し暑い温度と比べ、明らかに冷たい空気を保っていた。



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