一般人になるまで
数学の時間が終わったあと、後ろを振り返り改めてお礼を言う


「あ、さっきはどうも」

彼女は、一瞬なんのことか分からないような顔をして、思い出したようににっこりと笑って、どういたしまして!と言った

お礼を言ったあと、特に話す話題もないので、前を向こうとする
しかし、彼女が大声でそれを阻止した

「待って!」

止められるとは思っていなかった由紀はビクッとしながら、戸惑いがちにもう一度彼女を見る

「え、と、なに?」

むしろ止められる理由が見当たらない、何か見返りでも求められるのだろうか
お金はないわよ…と心の中で念じてみる


「…あっ、あのさ!由紀ちゃんって呼んでいい?」

沈黙
ポカンとしてしまった由紀の前には泣きそうな佳奈の顔
拍子抜けしてしまい、自然と笑みが出る

「…ふふっ、あなた面白いのね」

「えぇえ!?そうかなぁ…」

裏で陰口を言ってる奴らとは全然違う、裏表のない表情

「由紀、で構わないわ」

この日、拓人とは違うまともな友達が出来た
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