大好きなアナタと、気になるアイツ【番外編更新中】

２人の気持ち

由香里が震える足をゆっくり動かして車に近づく。

彼はそれをじっと見つめていた。

ほどなくして彼女は彼の目の前に立ち尽くした。

「……き……しゃ……社長？」

どちらの名前を呼べばいいのか迷ったのち、由香里は先程まで自分と一緒にいた方の名前で呼んでみた。

「よく……言えました。」

彼の両手がゆっくりと動いてその大きな胸の中にふわっと抱きしめられる。

由香里は抱きしめられたまま彼の顔を覗き込んだ。

彼女の大好きな、木崎の顔だった。

「ど……どうして？」

戸惑いのあまりどうしてもうまく言葉が出てこない。

「何が？」

分かっているはずなのに、彼はただ艶っぽい微笑みを彼女に返すだけだ。

由香里はいたたまれなくなってそっと腕から抜け出す。

とたんに彼の美しい顔から笑みが消えた。

その迫力に由香里の体がビクッと震える。

「やっぱり彼が、綾瀬が好きなの？」