大好きなアナタと、気になるアイツ【番外編更新中】
彼女も何かに気付いたようだ。

お互いがゆっくり近づく。

「き……木……崎…先生?」

「遅かったですね、由香里さん?」

彼女はこれで『木崎』と『西園寺』が同一人物だと気付いただろうか?

「……き……しゃ……社長?」

おかしな呼びかけだったがそれで彼女が気付いたのが分かる。

剛はそっと彼女を抱きしめた。

幸せな瞬間だった。

しかしそれもつかの間の事で、彼女はするりと彼の腕から抜け出してしまう。

「やっぱり彼が、綾瀬が好きなの?」

どうしても口調が冷たくなってしまった。

彼女が怯えたのが分かった。

剛は頭を冷やすために煙草を取りだして火をつける。

やっぱりそう簡単にいくはずがないのだ。

「今日は辛い事をさせてしまいましたね。好きでもない相手の婚約者なんて。」

冷静さを装って彼女に告げる。

眼の前で志水は、ぽかんと口を開けたまま何かを考え込んでいた。

「……私、社長が好きです。」
今度は剛の口がぽかっと開いて、咥えていた煙草がポトリと落とした。
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