大好きなアナタと、気になるアイツ【番外編更新中】
「キスを……されました。」

鈴木の横に椅子を用意されて仕方なく腰を下ろした由香里は恥ずかしそうに告白した。

「昨日の由香里ちゃん可愛かったからね。」

急なパーティーだったため本来なら西園寺が出席するはずであった会議に代わりに顔を出さなくてはならなくなった鈴木は、届いたドレスで着飾った由香里を見て同伴出来ない事を多いに悔しがっていたのだ。

「あ……でも、襲われたとかじゃなくて、どっちかっていうと怒られたと言いますか…。」

「え?お仕置き?マニアックだな~。」

「違います!」

なぜ、『怒られた』が『おしおき』になるんだろう。

マニアックなのは確実に鈴木の方だ。

由香里はこれ以上おかしな方向に話が行かないように昨日の出来事を鈴木に話し始めた。

「ふ~ん。斉木がいたのか。」

「……お知り合いですか?」

昨日の西園寺もそうだったが同じ業界にいる、しかもトップ同士なのだから知り合いでも何ら不思議ではない。

しかし、相手を呼ぶその砕けた言い方がそれ以上の何かを感じさせていた。

「僕たち3人、高校から一緒だったから。」

納得するとともに新たな疑問。

昨日の雰囲気はどう見ても最悪の関係にしか見えなかった。

何故?

由香里は首をかしげる。

「で、斉木と西園寺は犬猿の仲っていうか、一方的に斉木が喧嘩をしかけていたかな。」

由香里の表情を見て鈴木がつけ加えた。

「一方的にですか……。」

確かに昨日のこともそう考えれば、西園寺の同伴出来た由香里にちょっかいを出
して西園寺を怒らせていただけなのかもしれない。

「そう、それで西園寺は相手にしないからまた斉木が怒るの。」

昔を思い出しているのか、鈴木が懐かしそうに笑った。

「……そうだったのですか。」

西園寺は『由香里が』キスされそうになったから助けたのではなくて、斉木が由
香里に手を出すことで『自分が』嫌がらせを受けたことに腹を立てていたのだ。
由香里は納得するとともに何故か悲しい気持ちがあふれてきた。

「私、仕事に戻ります。」

由香里はかばんを手に取ると席を立って主のいない社長室へと入っていた。

「いつもは斉木を『無視する』西園寺が怒って、しなくてもいいキスをね……。」

鈴木が意味ありげに笑っていたことを由香里は知らなかった。
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