七つの椅子

「さっき店に居たイケメンは東城財閥の息子。あっちに居る男女ペアはネット会社の夫婦。ピンクの魔女っ子のお面を付けたキモい男はオモチャ屋の社長……」

エレナは丁寧に仮面に隠れた人物を教えてくれた。

その殆どが大手企業の社長や財閥の遺族だった。

「竜治……清太が居るわ」

「えっ!?」

エレナの指差す一番下の段のソファーを見ると、はんにゃで顔を隠した白いスーツの男が座っていた。

「あれが寿なのか……?」

「殺の椅子の存在を知ってたのね……。まぁここに居る殆どがトップクラスの人間だから、不思議では無いわね」

どうして寿の会社が急激に大きくなったのか、漸く理解した。

ケータイで見たニュース……あれは寿が椅子を使ってライバル会社を潰していたからだったんだ。

トップが消えた会社を取り込み大きくなる。

最近の“突然死”や“拡大化”は、殺の椅子が原因だったんだ。

「ずいぶん汚い所へ来ちゃったわね」

「さっさと落札して帰ろう」

「そうね……。長居する所じゃ無いわ」

俺達の憂鬱の溜め息が重なった。

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