シーソーが揺れてる
「今日西山さん、どうされたんでしょうか」
空白のベンチに視線を落としたまま良太は呟くように言った。
「さあ」
「夏風邪でもひいたんでしょうか」
「まっさかー、あいつがそんな簡単に風邪ひくわけないだろう」
「どうしてそんなことが?」
「ほらこの前も言っただろう。何とかは風邪ひかないって」
直人はあえて良太に向けてにやっと笑って見せた。
「ちょっちょっと先輩、それはいくら何でも失礼ですよ」
「いいっていいって、どうせ本人居ないんだからさ」
「いやでも・・・」
「何。西山が居ないと寂しいってかー?」
「えーっ?まあ、はい」
良太は照れ笑いを直人に見られるのが怖くてたまらなかった。なので、
「先輩のほうこそそうなんじゃないんですか?」
と反論した。
「あー?」
「だってさっき西山は居ないのかっておっしゃってたじゃ・・・」
「おまえが久しぶりに戻ってきたと思ったら今日は西山が居ないのかってことだよ」
「あー、・・・」
良太は先週バイトを休んでいたことをはっと思い出した。そして不安になった。
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