シーソーが揺れてる

「なあ、西山春香って子覚えてる?」
本日の仕事も終わり、店内清掃が1段落すると、直人はすぐ横に立つ親父さんにふと尋ねた。
「あー、おまえが小1の時ランドセル壊して泣かせた子だろう?覚えてるよー」
親父さんは直人に向けて意地悪そうな笑いを差し出して見せた。
「そんなことあったっけ?」
直人は眉をしかめた。
「何忘れたのかー?ひどいやつだなあ」
「昔のことは忘れたよ」
「何言ってんだおまえはー。あの時はびっくりしたぞ。連絡ノートを見たらでかでかと「杉浦君が西山さんのランドセルを叩いて壊したということがありました。乱暴なところがあるように見受けられますのでご家庭でもご指導のほどよろしくおねがいします」って担任から書いてあって・・・。おれはおまえをそんな悪いことをするような子に育てた覚えは無いぞって思った」
その時のことを思い出した親父さんの瞳は悔しさと怒りに溢れていた。
「なんかそういえば担任のかわごん、いや川井先生に思いっきり背中を叩かれたような覚えがあるような・・・」
「なあ?そうだろう?で、その子がどうしたんだ」
「うん、じつは昨日の夜電話があって・・・」
「なに春香ちゃんからかー?」
直人はこくんと頷いた。
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