シーソーが揺れてる

「じゃあお先に失礼しまーす」
「広美ちゃんにお大事にって伝えて」
「あっ、はーい」
合唱サークルの仲間と別れて、春香は一人公民館の廊下をエントランスに向けて歩いた。まだ夕方の5時過ぎだと言うのに、エントランスに続く廊下は暗くて静かだ。普段はそこを広美と二人話をしながら歩いているせいか、しんと静まり返った感じや照明の薄暗さなどは全く気にならなかったが、一人だとそれがものすごく怖く感じてしまう。
広美は今日、昨夜の酒が残っていることによる二日酔いのため練習を欠席した。たださすがに「二日酔いで」とは言えないので「風邪をひいて」と言うことにしてある。
歩きながら春香は切っていた携帯の電源を入れた。それから何秒かの後、センターに届いていたメールが春香の携帯に一気に送信された。
早速それらをチェックする。
メールは5件届いていた。
まず最初の1件は登録しているサイトからの情報メール。件名だけ読むと春香は次のメールを開いた。
差出人は広美だった。
「帰りにアイス買ってきて」との内容だった。
「えーめんどくさい」
そう呟きながらも春香は、
「分かった」と返事を返す。どうせこの後スーパーに寄るつもりでいたから。
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