シーソーが揺れてる

携帯が鳴ったのは夕方の6時を過ぎた頃だった。
着信音と共に表示されている名前を見た春香は、一瞬どきっとなった。その名前を持つ主の声は、今1番聞きたい声のように思えたからだ。
「もしもし」
ごく普通に電話に出る。
「あー、もしもし」
受話器の向こうの声をまだ一言しか聞いていないにも関わらず、その声からいつもには無い深刻さが伝わってくる。
「どうしたの?」
嫌な予感がする。
「今日、公園で、良太に会ったよなあ」
「うん、会ったけど・・・」
「あいつ、何か言ってなかったか?」
「・・・何かって?」
春香の胸に、鈍い痛みが走る。
「店辞めるかもしれない、みたいな」
「え?!」
そのあまりの驚きに、春香は携帯を床にたたきつけそうになった。
「片山くんが?」
慌てて携帯を耳に当て直すと春香は聞いた。
「うん」
直人は即座に答える。
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