たったひとつの愛と笑顔

破壊危機

今日は駅伝大会の日だった。

「俺、絶対まけねぇから。ぜってー、玉木だけにはめけねぇ。」

翔太の気合は十分だった。

「そんな~。いいじゃん。普通に走れば。」

すると、翔太は言った。


「絶対お前にカッコいいところ見せる。1番になるから。」


翔太・・。もう、それだけでカッコいいよ。


「おい。明日香、1番になったぞ。」


「ホントに♪翔太カッコいい。」

翔太は少し照れていた。

「だろ~。俺、カッコいい♪」


「もう、自分で言うな。」


「でも、本当のことだろ???明日香も可愛いよ。」



ドキッ。



「もう、翔太。照れるでしょ。」


と、いうラブラブな会話の中、翔太のいとこの蛍がやってきた。


「翔ちゃん。今日、一緒に帰ろう。」


ムカッ。


あのぉ。目の前に彼女がいるんだけど。


「わりぃ。俺、明日香と帰るから。無理。」


「えぇ。翔ちゃん、お願い。今日だけ今日だけ。」



うざっ。


この女、殺したい。


「明日香が困ってるだろ。俺ら2人で帰りてぇんだよ。」


そうだよそうだよ。


「じゃあ、明日香もいていいから。」



「いいか???明日香。」


ダメに決まってるじゃん。


「うん。別にいいよ。」


くそ。言っちゃった。



「悪いな明日香。今日だけだからな。」


本当に悪いよ。


「明日香、ゴメンネ。ちょっと先帰ってて。あとで翔ちゃんと追いつくから。」


はぁ??明日香、彼女なんだけど。

「明日香、やっぱり友達と帰るね。」


「わりぃ、俺、やっぱお前とは帰れねぇ。明日香と帰るわ。」


やっぱり、翔太は優しいから。


でも、この優しさが今は心の中に突き刺さっていく。


「いいよ。別に・・・。健二と帰るから。」

翔太は一瞬固まった。

「ぢゃあ、また。。。」


「明日ね」とは言わなかった。


だって、明日も蛍に翔太をとられそうだったから。

< 55 / 89 >

この作品をシェア

pagetop